この夏、ずっとやりたいと思っていたエピスリー、食材づくりを始めることができました。季節野菜のピクルスに続いて、チャツネ、有機トマトのケチャップ、ハーブやオレンジアニス、スダチのソルトなどを作っています。PBが目指すのは「ショコラトリー・エピスリー」。ショコラティエなのになんで食材づくり?とけげんな顔をされる方もいるかもしれませんが、僕の中ではごく自然なこと。最も専門的に突き詰めたいものはチョコレートなのでショコラテイエの看板を掲げていますが、チョコレートも、エピスリーも、コンフィチュールも、お菓子も、「料理」という「食」の世界の中に存在します。食の世界はボーダーレスなのです。




日本では、料理と菓子の間には境界線があって、特に菓子職人は料理人の仕事にあまりに興味を持っていないことを、とても残念に思います。本来、食の世界には境界線などなく、菓子は料理の一部、食事の流れの中に菓子は存在します。料理のカテゴリーの中で、比較的独立しやすい部分、菓子やパン、チョコレートもそうですが、これらが専門店として分かれていきましたが、もとを正せば、どれもレストランにおける料理を構成する1パートに過ぎません。したがって、料理を知らずに菓子を作ることは間違ったことで、菓子を作るのならば料理を知らなければいけない。これはとても重要なことだと思います。




料理の知識がないことは、ある意味、日本のパティシエの弱味と言えるかもしれません。料理の知識や経験のあるパティシエと、菓子しか作ったことのないパティシエでは、食べ物に対する考え方がまったく違う。お菓子を見ると一目でわかります。たとえば、ハーブやスパイスが流行るとそれを使ってお菓子を作りますが、料理におけるもともとの使い方を知らないから、ただやみくもに使ってしまう。お菓子の上に、ただ彩りのためだけにミントやセルフィーユを飾ってしまうように。これはとても不自然なこと。ミントは肉料理、特に子羊など臭いのきつい肉を料理する際にその臭い消しのために使うのが基本です。決して飾りではありません。




お菓子の上に飾りのためにバニラのさやをのせたり、こういった食べられないものをのせてはいけない。まったく不自然。なんの必然性もないでしょう? 食べ物なのですから、食べて意味のあるものを使って作らなければいけないという、食の大前提をきちんと認識しなくてはいけません。お菓子の上になにかをのせるのであれば、それは味や香りや食感をプラスするための食べ物でなくてはいけないし、お菓子で使っている素材を使うのが基本です。作り手だけではなく、食べ手の側も、流行りや見てくれのインパクトに惑わされることなく、食の本質を見極めていかなくてはいけません。




僕は幸せなことに、神戸「アラン・シャペル」で働いていたときに、シャペル氏の料理の哲学を、料理人たちから肌で学ぶことができました。食材に対しての料理のプロセスすべてに意味があり、理に適っていてとても自然でした。食材のありのままの姿をありのままに受けとめ、決して無理をさせない、ゆがませない。このシャペルの思いをしっかりと守っていきたい。僕のモットー「シンプル・ピュア・ナチュラル」の精神はここから出発しています。食材を見極め、手作り出来るものは出来る限り手作りする。その思いをこめて、これからもエピスリーのアイテムを1つずつ増やしていきたいと考えています。


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