温度と湿度に対して非常にデリケートなチョコレート。チョコレートの製造に最も適した温度は22〜23℃、湿度は55〜60%、 保存に適した温度は10℃前後です。「ショコラティエ ラ・ピエール・ブランシュ」では、一番良い状態のチョコレートを一番美味しく召し上がっていただきたいと考えておりますので、夏季の間、チョコレートの製造と販売を休止させていただきます。秋からのチョコレートシーズンには再び美味しいチョコレートをお届けいたします。しばらくの間お待ちくださいますようお願い申しあげます。

チョコレートが好きなお客様からは、「夏場でもチョコレートを食べたい」というご要望や、「クーラーをかければ涼しい環境でチョコレートを作れるのでは?」といったご意見をいただくことがあります。ここであらためまして、チョコレートの製造と販売を休止させていただいた理由、夏季の気候からチョコレートの受けるダメージについてご説明させていただきます。何卒ご理解のうえ、ご了承くださいますようお願い申しあげます。



日本の気候は高温多湿。特に湿度の高さが特徴で、梅雨から夏季にかけての不快な気候にはうんざりするほどです。チョコレートは温度と湿度に対して非常にデリケートですから、夏の季節にチョコレートを製造することには無理があると言わざるを得ません。チョコレートの製造に最も適した温度22〜23℃、湿度55〜60%の環境を維持することは不可能なのです。クーラーをガンガンに入れて室温を下げれば可能かというと、たとえ室温が下がったとしても湿度が下がり切らない。梅雨時には朝から晩までクーラーを入れ放しにしても、湿度は下がっていかないのです。

ヨーロッパの都市であれば、気温が30℃以上に上がったとしても、湿度は45〜50%程度をキープしています。このように気温が高くても湿度が低くカラッとしていて、強い日射しを避けて日陰に入ればひんやりするような気候であれば、クーラーをかければチョコレートの製造も可能だと思います。 でも日本の気候ではダメ。日本の夏はチョコレートを作るのにも食べるのにも適さない気候であることをご理解いただければと思います。



湿度の高い中で無理にチョコレートを製造してみると、チョコレートが湿気を吸ってしまいますから、テンパリングをしていてもいつもより重たくなっているのがわかります。あれだけ湿気を吸ってしまったら当然のこととして口溶けも悪くなる。 家でお菓子を作る方は、チョコレートを湯せんにかけた時に溶けないで残っているのを見たことがあるかと思います。熱がかかっているので混ぜれば溶けていくけれど、外側の形だけが残って溶け切れないでいるチョコレート。あれが湿気を吸ってしまっている状態です。

本来ならチョコレートは、溶解温度に達すれば自然にきれいにすぅーっと溶けて流れていくもの。溶けていきたいはずなのに、溶けることができないで残ってしまっているということは、口の中であればいつまでも溶けずにもたもた残ってしまっているような状態で、チョコレートの状態が非常に悪くなってしまっているということです。口溶けの良さはチョコレートの身上。香り、口溶けを追求していくチョコレート職人としては、なにもこんな状態のチョコレートでなにかを作ろうとは思いません。美味しいものを作ることは不可能なのです。



さらに考えなければいけないことはデリバリーの問題です。チョコレートの保存に適した温度は10℃。店鋪のない現在、チョコレートは宅配便で送らせていただいていますが、たとえクール便で送ったとしても冷蔵に無造作に入れてしまうので、冷蔵庫の温度や湿度にチョコレートは大きなダメージを受けてしまいます。先日たまたまクール便で送られてきたチョコレートを受け取ったのですが、あの状態を見ると本当にイヤになってしまいます。しかし、運搬業者の方に、デリバリーされる間のチョコレートについて、保存に適した環境を細かく求めることは不可能だと思っています。

ショーケースから一歩出れば、チョコレートは高温多湿の最悪の環境にさらされてしまいます。フルーツに旬があるように、お菓子もその季節で一番美味しく感じられるものを食べていただく。チョコレートも同じ。本当に美味しいと感じられる気候や環境の中で、最も良い状態の最も美味しいチョコレートを召し上がっていただくのがチョコレート職人の仕事。そうできない季節には、チョコレートは作らない、売らない。シンプルにナチュラルに考えればそうなります。


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