フレッシュフルーツの素材そのものを味わう美味しさもあるけれど、フルーツの美味しさはそれだけじゃない。火を入れて味が変わってくるフルーツ、火を入れてこそ出てくる美味しさもある。ジャムの中で一番好きなアプリコットは、 火を入れなくては出てこない美味しさを持ったジャムです。
たとえば、ブルーベリーは生で食べても美味しくないけれど、火を入れたならすごく香りが出てきて全然違う美味しさが出てくるし、アプリコットも生で食べるとしたら酸っぱくて嫌いだけれど、シロップ煮のアプリコットはとても美味しいし、ジャムにしたら大好きな味に変わります。
フルーツは加熱すると味わいが出てきて、他の素材と合わせればさらに味に奥行きが出てきます。美味しく熟したフレッシュフルーツをそのままお菓子にのせて食べるのもいいけれど、フルーツには加工することで生まれてくる美味しさもある。それを知ってもらうことはお菓子屋さんの仕事です。

PBのジャムは、フルーツに糖だけを加えて作っています。ペクチンを入れないのは、どうしてもペクチンの味が出てしまうし、ブリブリした食感になってしまうのが嫌だから。なめらかなナチュラルなとろみのある、クーリのような状態のジャムが理想。だから糖しか入れません。
お菓子にフルーツを使っても、そこにはクリーム、生地、いろんなものが加わってフルーツそのものの味がだんだんピュアじゃなくなっていく。逆にジャムはフルーツに糖しか加えないので、フルーツの味がストレートにピュアに出てきます。そこがおもしろいし、楽しいところ!
また、日本になかなかジャムを食べる習慣が根付かなかったのは、既製品のあのペクチンと砂糖の味しかしないようなジャムをジャムだと思ってしまっているから。香りもフルーツのナチュラルな香りではなくて人工的なフレーバー。あれはジャムとはいえない。《シンプル》 《ピュア》《ナチュラル》な、本物のジャムの美味しさを知ってもらうこともお菓子屋さんの仕事です。

ジャムが作れないようではお菓子屋さんとは言えない。ジャムには素材本来の味がそのまま出るので、同じフルーツでも時季によって違ってくるし、 熟れ具合でも違ってくる。そこのところの「ぶれ」を微調整しながら作っていきますが、この微調整がめちゃめちゃ楽しい!
フルーツ1kgに対して70%(オレンジなどは同量)の糖がベースですが、フルーツの状態を見ながら「適当」に前後させます。ルセットはあってないようなもの。ルセットを超えていくものだから料理と同じ。
ジャムに求める香りはフレッシュ感のある、素材そのものの持つナチュラルな香り。火の入れ方がポイントになります。ブルーベリーは火を入れてこそ香りと風味が生まれるけれど、行き過ぎると焦げた臭いがするし、詰めすぎると分離してザラザラになり食感も損ねてしまう。そういった加減がまたおもしろい!
素材がストレートに出るので、自分で作っていても美味しくないなあと思うこともあります。でもそれは仕方がない。素材にそういう味しかないんだから、それをどうのこうのしようということはできない。変にいじくったりしないでそう見極めることも大事。

これからPBでは、フルーツのジャムの他にも、ナッツやチョコレートのペースト、野菜、それこそ自家製のピクルス、タップナード、 トマトソースなども作っていきたいと考えています。なんでも自分で作らないと。昔はこういうものは自分のところで作っていたものだから。
お菓子にしても料理にしても、本当はそこから始まるんちゃう?という思いがある。今はいろいろな加工材料が売られていて、専門店であっても忙しさの中で安易に買って済ませてしまっていることが多いけれど、本来はこういうものからきちんと自家製で作っていかないといけない気がします。
商業ベースにのせようとしたらそこまでやってられないという事情も充分にわかるけれど、それでもやっぱり手作りしていかなくてはいけないと思うし、自分はそうしていきたいし、そうすることが楽しい!手作りをするのなら出来る限り手作りする。ジャムを作るということはそういうことだと思います。

手作りには手作りの味わいがあり、それは大量生産のラインで作られていくものとは対極にあるもの。大手メーカーでは合理性を追求するので味の均一化が要求されますが、それが一番ナンセンス。なんでもそうだけど、無理強いして均一化させようとするから物事がひずんでいくんだと思う。
お菓子よりもジャムの方が、均一化させることへのひずみが大きくあらわれます。フルーツという農作物だけで作るので、素材によって味の「ぶれ」が大きくあらわれるから。今年美味しくできても、来年のフルーツで美味しくできるとは限らない。そこがおもしろい!
自分が美味しいと思わなければ絶対に作らないので、今年作ったジャムでも来年は作らないこともあり得るし、作ったとしてもほんの少ししかできない場合もある。それでいいと思うし、そういうものだと思う。できんものはできん。素材をナチュラルに感じて、その持ち味をナチュラルに表現しようとするなら、当然そうなります。だからジャム作りが大好き!

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