白岩シェフに聞く
「ショコラティエのチョコレート作りへの思い」
〜2/11東京池袋東武百貨店トークショーより〜
香りを楽しむチョコレートは温度と湿度に非常に敏感
ショコラティエはそんなチョコレートのスペシャリスト
ここ何年かのチョコレートブームで東京にはたくさんのチョコレート専門店がオープンし、マスコミにも取り上げられて《ショコラティエ》という言葉がメジャーになってきましたが、皆さんもご存知のように、《パティシエ》と呼ばるお菓子職人の中で、チョコレートを専門的に扱う職人のことを《ショコラティエ》といいます。

チョコレートというものは、ワインや煙草と同様、香りをまず楽しむ非常にデリケートなもの。こういう専門的な知識が必要な分野を扱うにはスペシャリストが必要です。レストランの中に《ソムリエ》というワインのスペシャリストがいますが、簡単に言うと、《ショコラティエ》はお菓子屋さんに中でのソムリエみたいなものだとご理解ください。


チョコレートは温度や湿度に大きく影響を受けるものです。年間通して作られたり、売られたりしていますが、気温や湿度の低いヨーロッパと違って、日本では10〜3月くらいまでが一番適したシーズンです。僕も夏場は商品は作りません。日本のムシ暑い夏のうっとうしい中では、作るのも大変ですが、食べる方も真っ黒な色の濃厚な味のチョコレートを食べたいとは思わないでしょう?

チョコレートってすごくシンプルな食べ物ですので、そんなにいじくらなくてもストレートに美味しさを表現できる本当に"素直な"商品。いつも言っていることなのですが、チョコレートの一番美味しい食べ方は加工せずにそのまま食べること。それくらいシンプルなものです。ですから、なるべくそのシンプルな美味しさをそのまま味わっていただけるようなものを作りたいと思っています。

今回のバレンタインデーでご紹介したチョコレートは、どれも昔からあるクラシックなものばかりです。奇をてらったものとか斬新なものはありません。シンプルにチョコレートの美味し さを味わえるものを作っています。「セレクション」はクラシックなチョコレート菓子をたくさん詰め合わせたもの。いろいろなチョコレートを楽しみながら味わっていただきたいと思って作りました(右の写真参照)。

ブッシュ・ア・ラ・シエンヌ、エマンセ、マンディアン、マカダミアの詰め合わせ「セレクション」。
ブティックページから購入できます
子供にこそ本当に美味しいチョコレートを食べてほしい
それはチョコレート文化を根付かせる"種"を蒔くこと
本当に美味しい良いチョコレートをひとりでも多くの方に食べていただきたい、特に子供達に食べてもらいたいと思っています。ヨーロッパと日本との決定的な違いはチョコレートの文化だと思いますが、日本では専門店のチョコレートの価格が非常に高くて、1粒200円以上するのが当たり前のものを子供に食べさせようという気にはなかなかなりませんよね。

かといって現在子供達が食べることのできる市販のチョコレートは、大手さんのチョコレートを否定する訳ではありませんし、10粒100円のアーモンドチョコレートなどは、僕らにはコスト的に絶対に作れない、あの価格なりに美味しいチョコレートだということもわかりますが、やはり、ショコラティエから見れば本物の良質のチョコレートとは言い難い。


さらにもっと大事な問題として考えなくてはいけないこととして、味覚の育成という側面があります。今の子供達が親の世代になって自分の子供達にものを食べさせる時に、子供の頃から養った味覚というのは決定的に影響してきます。本物の味を味わわずに大人になれば、その味覚は次世代の子供達にも引き継がれてしまいます。
現在、神戸市須磨の自宅を改造してお店を開いていますが、向いに幼稚園、裏手には小学校がありますから、小さい子供達がお小遣いの50円玉を握りしめてやってくるんです。そんな子達相手に1粒200円以上のチョコレートを売る商売はできないですよね。だから50円で買えるようなチョコレートを作る。50円でも1粒200円のチョコレートとなんら変わらない材料を使って作っています。

子供達は感性が豊かで、味覚についてもまだ何にも穢されていない敏感な舌をしています。味の感じ方もすごくピュアなんですね。子供の頃から本当に美味しい良いチョコレートを食べていれば、その子達が大人になる30年後には、必ず本物のチョコレートの文化が日本にも根付いていると思うんです。今、その種を蒔くことを始めたい。花咲かせるまでにはここから30年かかりますから、"今"なんです。

食文化だけではなく、芸術でも娯楽でも、本当に良いものを子供に与えることができて、初めてそれが文化として根付いたと言えると思います。チョコレートの文化を日本に根付かせるためにも、本物のチョコレートを子供の口に入るような価格で提供したい。これが僕が「ショコラティエ ラ・ピエール・ブランシュ」を立ち上げた一番の思いです。
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