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| 2007年、スペイン・チョコヴィク社の新しいクーベルチュール「セルヴァティカ」が日本に上陸しました。テーマは「熱帯雨林」。このクーベルチュールは「熱帯雨林」というコンセプトをきっちりと描いて、そのイメージに基づいてカカオ豆をブレンドし、創り込んだチョコレートなのです。SELVATICASとはスペイン語で《野性》という意味。むせかえるような、もわっとしたような、高い温度と湿度を持った、まさに野性の動植物の暮らす「熱帯雨林」がイメージされます。 「セルヴァティカ」のシリーズは、「TARAKAN(タラカン)カカオ分75%」「KENDARI(ケンダリ)カカオ分60%」、そしてミルクチョコレート「NAYARIT(ナヤリット)カカオ分37%」、ホワイトチョコレート「JAINA(ハイナ)カカオ分31%」、以上4つのクーベルチュールで構成されていますが、これら4つの名前はどれも地名。「タラカン」「ケンダリ」は、約17,000以上の島々から成り立つ世界最大の島嶼国家・インドネシアの地名で、東カリマンタン州の「タラカン」島、南東スラウェシ州の「ケンダリ」を、「ナヤリット」「ハイナ」は、カカオのルーツ・マヤ、アステカなどの高度な先住文明で繁栄を極めたメキシコの「ナヤリット」州、密林に覆われたカラクムル自然保護区で知られるカンペチェ州の「ハイナ」湖をイメージして名付けられました。 シリーズの中核となる「タラカン」は、マダガスカルのクリオロ種をベースにブレンドされたカカオ分75%のクーベルチュールで、レモングラス、コリアンダーといったアジア的な香草の香りというか、クセの強いレモンや柑橘系の食べ物の香りのようなアロマを持ち、キレ味がするどく、苦味が先に走らず、レモングラスのような心地よい酸味があります。それでいて、《すっとしている》。独特のアロマと味わいを持つおいしいチョコレートなのです。これこそブレンドの醍醐味が余すところなく表現されたクーベルチュールと言えるでしょう。価格も単一豆より高く設定されています。 |
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そして、おもしろさを感じているのが「ナヤリット」。乳酸菌が加えられたミルクチョコレートで、酸味が強く、イメージとしてはベトナム料理のトムヤンクン。辛味のある酸味といった感じ。従来とはまったく違ったアロマと味わいで、ミルクチョコレートの新しい世界が広がったと言えます。 |
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| ここ十数年、クーベルチュールは希少価値のある産地限定の単一豆栽培(シングルプランテーション)の方向に走ってきました。豆の《個性》に徹底的にこだわり、そこから創られるクーベルチュールの《個性》を競い合ってきました、しかし、それがエスカレートするにつれ、価値ある単一豆の争奪戦が始まり、生産性の向上を余儀なくされた結果、豆が荒れてしまいました。高品質の単一豆を確保することが難しくなってしまいました。 産地限定の単一豆は、豆そのものの持つ個性やクオリティーを突き詰めて、完成されたクーベルチュールを創り出しました。これはチョコレートの《物語》であり、《イメージ》となり、ショコラティエの探究心、また消費者のチョコレートへの関心や興味といったものをリードしてきました。しかしこれは、ある意味において、《パンドラの箱》を開けてしまうこととなってしまった。豆が確保できないのであれば、単一豆のチョコレートには限界があると言わざるを得ない。つまり、一つの流行りであったと言わざるを得ないのです。 そういった中で、「セルヴァティカ」を口にして、久々、目の覚める思いがしました。 ショコラティエとして、強く思うのです。ある一つのコンセプト、ポリシーなりをしっかりと描いて、豆をブレンドして創り込むチョコレートのすごさ、《ブレンドすることの良さ》というものが、確かにあると。 産地にこだわるのも一つの方向。これは《ワイン》的な考え方と言えます。そして、ブレンドにこだわるのも一つの方向。これは《コーヒー》的な考え方と言えます。 ブレンドには、品質を一定に保つ必要に迫られてという側面も確かにありますが、調合することによって、単一豆には出し得ないと《奥行き》を出すことができます。それがクーベルチュールの《個性》となります。本来、ショコラトリー(チョコレートをカカオ豆から製造する店)とは、カカオ豆のブレンド力が問われ、その出来不出来によって評価されました。 |
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「セルヴァティカ」の登場によって、このショコラトリーのあるべき姿があらためて世の中に問われるのではないかと思うのです。しっかりとしたコンセプトを描き、それに基づいて創り込まれたクーベルチュール「セルヴェティカ」。この初の試みに、《ブレンドすることのすごさ》をあらためて思い知らされました。ショコラトリーのポリシー、職人の感性にしたがって徹底的に創り込まれたクーベルチュールは、強い個性の輝きを放ちます。クーベルチュールの個性、そしてそこに宿るショコラトリーの情熱が、僕らショコラティエに創造のエネルギーを与えてくれます。 |
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| 新たなる情熱につき動かされて、2008年のチョコレートシーズンが始まります。
PBのショコラにどうぞご期待ください! |
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