チョコレートにおいて、カカオ成分や砂糖はクーベルチュールの風味、味、色合いなどを決める要素、そしてカカオバターは、カカオ成分や砂糖、粉乳などを結合させてひとつにまとめ、その温度による可塑性により、全体を、流動状、半流動状、固形状に変化させる働きをします。カカオバターは、チョコレート製品の品質や、保存中の品質の変化など、すべてに影響を与える重要な役割を果たしているといえます。チョコレートの口溶けの良し悪しは、カカオバターの結晶が安定しているかどうかにかかっているのです。



カカオバターには「冷却の仕方次第で融点の異なる数種類の結晶になる」という性質があり、一般的に、6種類の結晶型(分子の並び方)があるとされています。それぞれの融点は、【T型=17.3℃ U型=23.3℃ V型=25.5℃ W型=27.5℃ X型=33.8℃ Y型=36.6℃】。溶けたカカオバターの温度が下がって凝固する過程でどの型になるかによって、チョコレートやクーベルチュールの性質が変わり、状態の良し悪しが決まってしまいます。熱をかけてチョコレートを溶かすと、チョコレートの分子はカカオバターも含めてすべてバラバラになっています。そこから温度が下がるにしたがって結晶が出てきますが、カカオバターの結晶は、「結晶の融点と冷却温度の差が大きい条件でできる結晶の型は不安定になる」という油脂の性質にしたがって、冷却温度が低いほど早く進み、その結晶は不安定な結晶型(前記のT〜W型の結晶型)になってしまいます。溶けたチョコレートを室温にそのまま放置しておくと、分子の並びの粗い不安定な結晶ができてしまいますが、これをさらにそのまま放置すると、「不安定な結晶は常温で溶解しがら、より安定した結晶型に変化しながら再結晶化する」という性質にしたがって、最終的には分子がきちんと並んだ状態にはなるものの、常温下だとW型からX型に変化するのに20〜30日以上かかってしまうため、その間に結晶が粗大化してしまいます。するとざらつきがあって口溶けが悪くなり、さらに、粗大化したカカオバターの結晶がチョコレートの表面に浮き出る「ブルーム現象」を起こしてしまいます。




このように、チョコレートが室温で固形化する安定結晶は、X型とY型の2つですが、Y型は固まっているものの、結晶のサイズが粗く大きいため、光沢がなくて口溶けが悪くなり、チョコレートとしては不適当な状態です。したがって、チョコレートに最も適したカカオバターの結晶型はX型のみ、ということになります。


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